中国人強制連行・強制労働事件

 中国人強制連行・強制労働事件とは、第二次世界大戦中、日本政府と日本の企業が共同して、中国人約4万人を日本国内各地に強制的に連行し、多数を死傷させたという事件で、現在、福岡では、福岡県内の炭鉱(現、三井鉱山、三菱マテリアル)に強制連行された被害者が、国と両社に対して謝罪と賠償を求めている事件です。
 2009年3月9日、福岡高等裁判所は、地裁判決に引き続き、国が、国策として中国人労働者移入政策に基づき、暴力等を用いて、原告らの意思に反し拘束し日本に強制連行し、事業場の経営を支配し、中国人被害者の監視に当たるなど強制労働に加担したもので、その行為は不法行為に当たると認定しました。また、企業は、中国人がその意思に反して日本に輸送されるものであることを知り又は知りうる状況にありながら、中国において中国人被害者の引き渡しを受けてその輸送を行い、各鉱業所において直接強制労働させたもので、この行為は不法行為に当たると認定しました。
 このように判決は、国と被告企業らの悪質な共同不法行為を詳細に認定しています。
 しかし、国に対しては国家無答責の法理を理由にして、企業に対しては除斥期間の経過等を理由にして、中国人被害者の請求を棄却しました。
 もっとも、福岡高裁は、2008年4月に「本件強制連行・強制労働は、国策として遂行された。企業は労働力の利用自体によって相応の利益を受けた上、補償金まで取得している。被害者らの被った精神的・肉体的苦痛は言語に絶するほど大きなものであった。被害者らの請求権が裁判上訴求する権能を失ったことについては、当然ながら被害者らの意向が反映しているものとは認められない。との事情にかんがみ、国及び関係企業に対し、和解による解決への前向きの配慮を求める。」とする和解所見を発表しました。
 最高裁も、同種事件(いわゆる西松事件)において「被害者らの被害の救済に向けた努力をすることが期待される。」と述べています。
 わが国の平和を維持するためには、日中の真の友好が不可欠であり、そのためには、本件の一刻も早い全面的解決が不可欠です。
 現にユダヤ人に対して強制連行等をおこなったドイツにおいては、「記憶・責任・未来基金」を創設し、国と企業が一体となって被害者らへの謝罪と賠償を行い、ヨーロッパの各国から高い評価を得ています。
今こそ、わが国においても、政府と企業が共同で基金を創設し、中国人被害者への謝罪と賠償を行い、日中の友好、東アジアの平和へ貢献すべきと考えます。
 (2009年8月28日)
 【写真は、59年ぶりに強制労働の現場に立った中国人被害者(飯塚市の忠隈炭鉱跡)】


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